無名の場所

それまで立ち入ることを禁じられていた場所が、突然開放されたとき、人々は戸惑いながらも、さてこれをどのように使おうかと、思いを巡らすにちがいない。あらゆるアイデアが構想されるだろう。それまで、空白として人々の頭のなかで考えられていた場所は、ブラックホールのように、人々の生活や仕事やふるまいを取り込んでいく。このとき、構想者には専門家も非専門家も同じである。質や深度のちがいはあれど、それは本質的なちがいではない。しかしいずれ、そのちがいが本質的なものになるだろう。その場所を専有する人間が現れ、意味や使い道を固定し、自由な使用を遮断する。ブラックホールの時代は終わり、その周囲にこれまであった空間となだらかに結ばれる。