空間の歴史

私はいま、ある空間の歴史を書いている。空間自体、空間そのものの歴史である。もちろん空間とは曖昧模糊としていて直接触れ得る存在ではない。だから、なんらかの媒介を介することで、ようやく私は空間の歴史を書くことができる立場に立っている。空間とはある事物と事物のあいだに存する余白であり、その余白を生み出す事物が干渉することではじめて空間が立ち上がる、という定義をおこなったのはG.ジンメルである。私が書こうとする空間の歴史は、それを(余白ではなく)空間として成り立たせる事物の歴史と、その事物の干渉の仕方を通して描き出される。